このブログは留学当初から書き記しているのでPh.D.取得へ向けて歩いてきた軌跡を辿ることができます。振り返ると2008年5月19日に渡米して修士課程の3年半、博士課程の2年半に渡る合計6年の道のりでした。本日はちょうど6年もの時が流れた2014年5月19日です。ようやく研究者として初めの一歩を踏み出せたのかなと考えています。

卒業後ですが今年の夏からPIとして量的遺伝学の研究室をネブラスカ大学リンカーン校にて運営していきます。職階はアシスタント・プロフェッサーであり、契約はアメリカでは誰もが通らなければならない一般的なシステムであるテニュア・トラックです。

卒業に伴いこの「動物遺伝系大学院留学記」の更新を停止して、新たに立ち上げたはてなブログに移行することに決定しました。

リンカーン日誌 - 或る量的遺伝学者のテニュア取得までへの道

このブロクを読んでコメントをくれたりやメールを送ってくれた読者のみなさん、今までありがとうございました。これからも引き続きよろしくお願いします。

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最後に大学院生活の6年間を過ごしたマディソンの風景を紹介して終わりとします。

Ph.D.!!

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昨日自分のPh.D. Defenseが行われ、無事にPh.D.を授与されました!

Ph.D.取得を目標に渡米したのが2008年の5月なので、ちょうど丸6年間の歳月を経て目標を達成するこができました。20代の半分以上を捧げることになったとても長い道のりでしたが、充実した日々でした。初めてアメリカの地に降り立った6年前を振り返ると何か込み上げてくるものがあります。

Defenseの形式は2011年に経験した修士論文のdefenseと全く同じでした。無事に指導教官と審査委員である教授陣からPh.D.授与を認める署名を頂きました。あとは博士論文を大学院に提出するだけです。

phdwarrant.JPG次回は卒業後の進路の報告と、このブログを今後どうするかについて述べたいと思います。

前回の記事から時間が空いてしまいましたが、久しぶりの投稿です。近況を簡単に箇条書きのような形式で報告します。

1) いよいよ博士論文のデフェンス(日本の公聴会に相当)まで1ヶ月を切りました。来週の月曜日には、ボス以外の審査委員に博士論文を提出します。実際のディフェンスは5月中旬に開催予定です。ABDになってからちょうど1年なので、順調に研究を進めることができたと思います。いよいよ大学院留学の総仕上げです。

2) WCGALPという僕たちの分野で重要な国際学会が8月に開かれますが、ビザの問題が解決できそうなので共著者として参加予定です。そろそろ学会参加登録してホテルを探さないといけませんね。ボスは "Statistical methods - linear and nonlinear models" というセクションを担当しているのですが、50本近くに及んだらしい投稿プロシーディングスの中から口頭発表者を選ぶ作業は大変そうでした。

3) JREC-IN経由ですが、東京農業大学生物産業学部生物生産学科は産業動物と野生動物を対象にする動物遺伝育種学者を公募しているそうです。勤務地は北海道網走市で、職階は教授又は准教授と書いてあります。動物遺伝学分野では今年最初の公募なのではないでしょうか?

さて来月はいいニュースが報告できるようにもうひと頑張りです。

去年4年前に動物遺伝系の研究に関連があるメーリングリストを紹介しました。そこで取り上げたメーリングリストはすべて使用言語が英語でした。さて、日本語を使用言語とする動物遺伝系のメーリングリストは存在するのでしょうか?他の近い分野に目を向けてみるとバイオインフォマティクスでは ngs-field、bioinformatics-jp、infobiologist があり、植物遺伝・ゲノムの分野では phytoinformatics、rice-net 等が存在します。

しかし自分が知る限り動物遺伝系のメーリングリストは聞いたことがありません。動物の遺伝・ゲノムに関心がある研究者が情報の交換をしたり、公開セミナー・学会・短期集中講義の開催案内を迅速に効率的に共有するという目的で誰でも購読可能な日本語メーリングリストが1つくらいあってもいいのではないでしょうか。どっかのウェブサイトでRSSにて情報を発信してくれてもいいのですが、これだと情報の流れが一方通行になってしまいます。理想的には日本畜産学会(遺伝・育種)や日本動物遺伝育種学会といった学会に付属する形式で(ただし会員資格の有無は問わずに)作成するのが最適かなと考えます。

確かにメーリングリストの運営は少し手間がかかりますが、海外在住の自分でもよいのなら喜んでお手伝いしたいと思います。今まで動物遺伝・ゲノムと表現していましたが、動物の量的遺伝学、分子遺伝学、集団遺伝学、ゲノミックス、バイオインフォマティクスに従事している研究者が集合して連絡を取り合える場所があってもいいのではというのが今回の主旨です。

ただ自分が知らないだけで、すでにそのようなメーリングリストが存在しているのでしたら、ぜひ教えて頂けると嬉しいです。

初の共著論文

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筆頭ではなく共著者として初めて関与した研究がJABG誌に2本掲載されました。筆頭著者はイランにあるテヘラン大学動物遺伝育種学グループの博士課程に在学する学生です。彼は8ヶ月程の短期留学にてマディソンのボスに師事していました。その期間に従事した研究成果が今回の論文です。


要約すると相加的遺伝分散の推定と相加的遺伝子効果の予測(ゲノミック選抜)をマーカー密度やマイナーアリル頻度にてクラス分割して検証しています。論文1に関しては日本でも同じ路線の論文が去年に出ていますね。

動物遺伝学はイランにて盛んなようで多くの学生を海外へ送り出しています。北米と西欧の主要大学には必ずイラン人の学生が1人か2人いるのではないでしょうか。彼曰くテヘラン大学にて彼が師事している教授は3人おり、2名がカナダのゲルフ大学、残りの1人がオランダのワーハニンゲン大学でPh.D.を取得しているそうです。そのうちの1人は血統情報から得られる分子血縁行列に代わりゲノム関係行列の使用を遺伝評価の文脈にて初めて提案した1人でもあります(論文はこちら)。

面白いことにイランのアカデミアでは2人目の著者がSenior authorに該当するそうです。日本やアメリカとは異なり最後の著者ではありません。数学のように著者名はアルファベット順といった具合で分野による違いがあるのは認識していますが、まさか国によって異なるとは思ってもみなかったことなのでびっくりしました。今回の論文では彼のテヘランのボスが2人目のポジション、マディソンのボスが最後のポジションをSenior authorとして取るということで「みんなが幸せ」という結末になりました。

筆頭著者の彼は去年無事にPh.D.を取得して、何と来月にはポスドクとしてマディソンへ戻って来るそうなので楽しみにしています。